保育園の理想の職場風土はどんなもの?|組織風土の要素や取り組み

投稿日:2023年3月1日

組織風土という言葉はお聞きになったことはあるでしょうか。
「〇〇園はこんな雰囲気だよね」という園のイメージに関わってくるものです。
今回は、組織風土とはなにか、どのような種類や要素があるのか、そしてより良くするために保育園でできる取り組みをご紹介します。
目次

保育園における職場風土とは

組織風土とは、「組織の中で共通認識として持たれている独自のルール・物事の考え方」を言います。「風土」という言葉は、ある地域の気候や地形、その土地に住む人達の人柄のようなものを表しますので、「組織風土」は、その組織に浸透している他とは違う環境と言えます。簡単にいうと「職場の雰囲気」です。
そして組織風土は、職員さんたちの普段の行動や判断、考え方などから、長年かけて作り上げられて、受け継がれてきたものです。良い組織風土が根づいている保育園では、自然と仕事へのモチベーションや保育のパフォーマンスの向上にもつながると考えられます。

職場風土:組織の中で共通認識として持たれている独自のルール・物事の考え方

組織文化との違い

似たような言葉に「組織文化」があります。組織文化とは、「組織の中で共有されている行動の基準や強い意志」です。「文化」とは「ある集団が持つ固有の様式」と言われます。組織の中で意識的に作り上げるものと言えます。
自分たちの保育園はこの考え方をよしとしているというような価値観を、理念や方針などを用いて職員に伝えます。この園の考え方をもとに、職員たちは判断し行動し、日々の仕事を行います。
「組織風土」を醸成するためにも、組織文化の基盤が重要です。組織風土は、職員の行動や判断、物事への考え方で作り上げられると書きました。例えば、「子どもの意志を尊重する」という方針があれば、子どもがやってみたい!と言った遊びを「時間がないからできない」のように拒否するのではなく、どうしたらできるか一緒に考えるという行動につながるでしょう。このように、その行動や判断にいたる基準として、組織文化を活用しています。

組織文化:組織の中で共有されている行動の基準や強い意志

保育園で組織風土と組織文化が重要な理由

なぜ保育園で組織風土や組織文化が重要なのでしょうか。組織風土が良くなると、以下のような効果が期待できます。

組織風土がよくなると…
・人間関係が良くなり、働きやすい環境になる
・仕事へのモチベーションやパフォーマンスが上がる
・園の考えと一致した望ましい判断ができる
・定着率が高くなる
・園のカラーにあった職員を採用できる

もし、組織風土が悪くなってしまうと上記と逆の状況につながります。

組織風土が悪くなると…
・人間関係が悪くなり、働きにくい環境になる
・仕事へのモチベーションやパフォーマンスが下がる
・園の考えにそぐわない判断をしてしまう
・離職率が高くなる
・園のカラーに合わない職員を採用してしまう

このように、人間関係や仕事の進め方、園の人事にも関わってくる大切なものです。

保育園の4種類の組織風土

組織風土には種類があります。一般的に示される4つの組織風土から特徴をご紹介します。皆さんの園はどの風土に近いでしょうか。

A_活力ある組織風土

・将来への希望を持ち、園の一員として誇りをもっている
・目標が明確で、職員はその価値や仕事の意味をよく理解している
・先輩後輩、同僚、他職種など、全体のコミュニケーションがよく、各々責任感をもって仕事をしている
・新しいアイデアや意見が現場から出され、それを実行することができる

B_トップダウンの組織風土

・権限の大きい園長や主任の判断や決断を信じ、職員は実行することに注力している
 (現場は保育に専念している)
・指示がでるとすぐに行動に移すことができるが、指示がない場合は待ちの姿勢になる
・同僚などの横のコミュニケーションは少なく、上司などからの縦のコミュニケーションが中心になる

C_官僚的な組織風土

・規律や規則で職員の行動を管理している
・マニュアルなどの決まりに従いがちで、臨機応変な対応は少ない
・リスクをとって、新しいアイデアや意見を出すことは少ない
・手段に重点をおき、完璧主義で慎重な判断をする

D_どんよりした組織風土

・職員が自分のことだけを考えており、短期的なメリットを重視している
・目標は、表面的には受け入れられているが、言われたことしかやらない
・失敗を恐れて挑戦しようとせず、意見やアイデアが少ない
・過去のやり方を繰り返すことが多く、変化を受け入れたがらない
組織風土は、B→A→C→Dと変わることが多く、それを避けるには、常に今の組織風土を確認し変化するための施策を行うことが重要です。

保育園の組織風土を醸成する3つの要素

組織風土を作り出す要素は3つあります。
ハード要素とソフト要素、メンタル要素のそれぞれをご紹介します。

ハード要素

・保育園の理念
・保育方針
・クレド
・人事制度
・就業規則
・業務マニュアル
・コンプライアンス規約 など
組織風土の中でも、目に見える要素です。園内での決まりごとなどが多いので、話し合って変えることができる部分であり、組織風土を変革するなら取り組みやすい要素と言えるでしょう。ハード要素を成り立たせることは、組織風土の土台となります。

ソフト要素

・人間関係
・職場の環境
・モチベーション
・ローカルルール
・チームワーク
・責任の所在
ハード要素と違って目に見えない要素です。主に職員の行動がもとになっている要素なので、変化させることは容易ではありません。人の行動のクセを直すような感覚に近いでしょうか。しかし、経営者からハード要素としての組織文化を浸透する取り組みをすることや、職員同士のコミュニケーションを改善することで徐々に変化が見られるでしょう。

メンタル要素

・心理的安全性
・信頼関係
・組織への愛着
ソフト要素の中でも、職員の心理面に大きく影響があるものです。職員の個々の内面に関わるものなので、特に変えることが難しいとされています。しかし、心理的安全性を高めたり、信頼関係を構築したりするための取り組みは園が主導することができます。

保育園でできる組織風土を変える取り組み

ここまで組織風土の種類や要素についてお伝えしてきましたが、自園が現在はどのような組織風土になっているか明確になってきたでしょうか。理想とする組織風土だから維持したいという園も、もっと良い組織風土に変革したいという園も知っておきたい、組織風土に影響を与える取り組みについてご紹介します。

組織文化の確立と浸透

組織風土のハード要素の部分である、組織文化を確立することは組織風土に大きな影響を与えます。組織文化は作り上げていくものですから、理念や方針、人事制度を明確に示し、私たちの園でよしとされる価値観を共有しましょう。さらに園の考えを反映した行動を職員に促し、組織文化を園に浸透させることが重要です。どんなに良い理想を掲げても職員に定着しなければ組織文化を根づかせることはできません。特におすすめなのがエピソードの共有です。日々の保育の中で私たちの園らしいエピソードを蓄積し、新しく入る職員にも共有することで園での経験が浅くても具体的なイメージを持って保育にあたることができるでしょう。

職員のコミュニケーションの活性化

組織風土のソフト要素の改善には、コミュニケーションを活性化させる取り組みを取り入れるとよいでしょう。

園内で価値観や考えを共有する機会を設ける

職員同士が同じ価値観や考えを共有することで、スムーズに意思疎通を図ることができるでしょう。個々の多様な価値観を変容させるのではなく、園の価値観や考えの共通認識を持つということです。「私はこう思う」から「私たちはこう思う」という意識を持てるように働きかけるための機会です。それには、前提となる考え方を合わせることが必要です。

コミュニケーション能力を高める研修を実施する

園の価値観をもとにコミュニケーションを図るとき、伝え方や方法がわからなかったり、誤った手段を選択したりすると、内容がうまく伝達されないことがあります。「言っていることはわかるけど、なんでそんな言い方をするんだろう」「ちゃんと伝えたのになんで理解してくれないんだろう」とお互いわだかまりができてしまうかもしれません。コミュニケーション能力は練習によって上達できるスキルですが、学んだことがないという人も多いでしょう。お互いが気持ちよくコミュニケーションを図り、正確に伝えたいことを正しく理解してもらうために、方法論を学んでみることも手段の一つです。
ネクサスで実施している研修プログラムもありますので、ご興味あればご覧ください。

まとめ

組織風土の種類と要素、変えていくための方法についてお話しました。変えてみたいなと思われたときは、まず組織風土のハード要素である、園の理念から展開した園内の決まり(人事制度、育成計画、業務マニュアル)などを見直すことからおすすめします。どんな組織風土の園にしたいのか、そのためにはどのように職員に伝えたら良いのか、思いを膨らませてみてはいかがでしょうか。
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