【2022年10月施行】保育士も知っておきたい産後パパ育休とは|育児・介護休業法の改正の全体像

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投稿日:2022年8月17日

2021年(令和3年)に改正された育児・介護休業法が2022年4月から段階的に施行されています。
そして、新しく創設された出生時育児休業(通称:産後パパ育休)が2022年10月より施行となります。産後パパ育休はこれまでの育児休業と別の制度であり、対象者は両方を取得することができます。

園に所属する男性職員が活用できる制度としてはもちろん、保護者にも利用する方が今後増えることが予想されますので、制度の理解を深めましょう。

2022年4月施行①個別の制度周知・休業取得意向確認と雇用環境整備の措置の義務化
②有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和
2022年10月施行③産後パパ育休(出生時育児休業)の創設
④育児休業の分割取得
2023年4月施行⑤育児休業取得状況の公表の義務化
育児・介護休業法の改正の全体像
目次

2022年4月施行の内容

①個別の制度周知・休業取得意向確認と雇用環境整備の措置

申出をした労働者に対する個別の制度周知・休業取得意向確認の措置

本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出た労働者に対して、事業主は育児休業制度等に関する以下の事項の周知と休業取得の意向確認の措置を個別に行わなければならない、と義務付けられました。

個別に周知する内容
1)育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)に関する制度
2)育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)の申出先
3)育児休業給付に関すること
4)労働者が育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)期間に負担すべき社会保険料の取扱い

周知方法は、面談でも書面でも構いません。申し出があった時点で速やかに休業制度の詳細を説明し、その上で利用するかどうかを確認します。家族と相談の上で取得の有無や期間を検討したい、という場合が多いでしょうから、いつまでに結論を出してほしい、という期限も伝え、必要に応じて面談を重ねます。

育児休業を取得しやすい雇用環境の整備の措置

育児休業と出生時育児休業(産後パパ育休)の申出が円滑に行われるようにするため、事業主は以下のいずれかの措置を講じなければならない、と義務付けられました。

  1. 育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)に関する研修の実施
    全職員を対象とすることが望ましいですが、少なくとも管理職は研修を受けたことがある状態にしておきましょう。
  2. 育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)に関する相談体制の整備(相談窓口設置)
    相談窓口の設置や相談対応者を置きこれを周知することを意味しますが、保育園ではほとんどの場合、園長や主任などの管理者が担当することが多いでしょう。職員に対して周知を行い職員が制度を利用しやすい体制を整備します。
  3. 自社の労働者の育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)取得事例の収集・提供
    自園の育児休業の取得事例を収集し、これらの事例を職員が閲覧できるようにすることを意味します。性別や職種、雇用形態に関わらず取得できる、ということが新しく入職した職員にもわかるようまとめておけると良いでしょう。
  4. 自社の労働者へ育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)制度と育児休業取得促進に関する方針の周知
    育児休業に関する制度と育児休業の取得の促進に関する園の方針を記載したものを、園内やイントラネットへ掲示すること等を意味します。

これら全てを実施しなければならないわけではなく、いずれかの措置を講じることとなっていますので、園内の育休制度を男女ともに活用できるよう整備し、それを全職員に周知、その後も制度について知りたいと思った時にいつでも確認できる状態にしておけば問題ありません。

②有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和

期間を定めて雇用される労働者(有期雇用労働者)の育児休業と介護休業の取得要件の緩和が義務化されています。

有期雇用労働者の休業取得要件
育児休業:1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでない
介護休業:介護休業開始予定日から起算して、93日経過日から6か月を経過する日までに契約が満了することが明らかでない

育児休業(介護休業)の申出があった時点で、労働契約の更新がないことが確実であるか否かによって判断されます。園が「更新しない」旨の明示をしていない場合は、原則として「労働契約の更新がないことが確実」とは判断されません。つまり、例えば年度更新契約の職員でも今年度末で契約終了ということが確約されていなければ(来年度も契約更新するかもしれないとされていれば)対象者になるということです。

改正前には、有期雇用の職員の場合は1年以上雇用された人でなければ取得できませんでしたが、その条件が撤廃され、より多くの方が使えるようになりました。

2022年10月施行の内容

2022年10月から、希望する対象者は出生時育児休業と育児休業の両方を取得できるようになります。それぞれの制度の概要は以下の通りです。

2022年
10月1日〜
産後パパ育休
(新設制度)
育児休業制度
(一部改正)
対象期間
取得可能日数
子の出生後8週間以内に
4週間まで取得可能
原則子が1歳 (最長2歳)まで
申出期限原則休業の2週間前まで原則1か月前まで
分割取得分割して2回取得可能
(初めにまとめて申し出ることが必要)
分割して2回取得可能
(取得の際にそれぞれ申出)
休業中の就業労使協定を締結している場合に限り、
労働者が合意した範囲で
休業中に就業することが可能
原則就業不可
1歳以降の延長育休開始日を柔軟化
1歳以降の再取得特別な事情がある場合に限り
再取得可能
令和4年10月以降の 産後パパ育休育児休業制度 の利用イメージ

それでは、それぞれの内容について、詳しく見ていきましょう。

③産後パパ育休(出生時育児休業)の創設

出生時育児休業(通称:産後パパ育休)は、育児休業とは別に取得できます。 従来の育児休業と同様、労働者が容易に取得できるように、事業所にあらかじめ制度を導入し、就業規則の整備等必要な措置を講じなければなりません。

出生時育児休業の制度概要

休業の定義産後休業をしていない労働者が、原則出生後8週間以内の子を養育するためにする休業 
※「子」の範囲は、労働者と法律上の親子関係がある子(養子を含む)のほか、特別養子縁組のための試験的な養育期間にある子や養子縁組里親に委託されている子等を含む。(通常の育児休業と同じ)
対象者産後休業をしていない労働者
 主に男性が対象だが、養子等の場合は女性も対象。 配偶者が専業主婦(夫)でも取得可能。 
・有期雇用労働者は、申出時点で、子の出生日又は出産予定日のいずれか遅い方から起算して8週間を経過する日の翌日から6か月を経過する日までに労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかでない者に限る。
・労使協定の締結により対象外にできる労働者
 ①入社1年未満の労働者
 ②申出の日から8週間以内に雇用関係が終了することが明らかな労働者
 ③1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
対象期間
取得可能日数
子の出生後8週間以内に4週間(28日)まで
※原則出生日から8週間後までの間だが、出産予定日前に子が生まれた場合は、出生日から出産予定日の8週間後まで、出産予定日後に子が生まれた場合は、出産予定日から出生日の8週間後まで。
※企業独自の育児目的休暇(法定の休暇を除く)が、出生時育児休業(産後パパ育休)の取得日数以外の要件を満たすものであれば、当該休暇の日数も含めて4週間が確保されればよいと解される。
回数分割して2回まで 
・分割する場合は、初めにまとめて申し出ない場合、事業主は後から行われた申出を拒むことができる。
4週間を超える延長等出生後8週間を超える休業や取得期間4週間(28日)を超える休業はできない。
(4週間を超える期間等は通常の育児休業を取得)
休業中の就業労使協定を締結している場合に限り、労働者が合意した範囲で休業中に就業することが可能。
手続き申出方法・休業を取得したい労働者は、書面で事業主に申出を行う
・労働者から申出があったら、事業主は速やかに(おおむね1週間以内)取扱通知書を書面で交付しなければならない
申出期限・原則休業開始の2週間前まで
・ただし、雇用環境の整備などについて、方を上回る取組を労使協定で定めている場合は、1ヶ月前までとすることができる
・出産予定日前に子が出生した等の場合は、1週間前まで
繰上げ・繰下げ変更・出産予定日前に子が出生した等の場合は、休業1回につき1回に限り休業開始予定日の繰上げ変更が可能。申出期限は変更後の休業開始予定日の1週間前まで。
・休業終了予定日の繰下げ変更は、事由を問わず休業1回につき異界に限り可能。申出期限は当初の終了予定日の2週間前まで。
申出の撤回休業開始予定日の前日までに申し出れば撤回可能。撤回1回につき1回休業したものとみなす。2回撤回した場合、みなしを含めて2回休業後に再度申し出ることはできない。

産後パパ育休期間における休業中の就業

労使協定を締結している場合、産後パパ育休期間中にも対象の職員を就業させることができます。保育園で使うことがあるとすれば、育休期間内に園の大きな行事があるなどしてその当日前後にどうしても人員が必要な場合などでしょうか。そういった可能性がある場合は、予め労使協定を締結しておきましょう。

基本的には、休業中には就業しないことが原則です。労使協定を締結していたとしても、園側が一方的に就業を命じることはできませんし、職員本人が希望したからといって必ず就業させなければいけないわけでもありません。

また、休業中の就業には事前の労使協定締結の他にも使用するためのルールがいくつかありますので、制度をよく理解した上で活用しましょう。

④育児休業の分割取得

前述③の産後パパ育休とは別の、従来の育児休業の改正です。

1歳までの育児休業

1歳までの育児休業は分割して2回取得可能になります。 出生時育児休業(産後パパ育休)とは別に取得できるので、1歳までの間に合わせて最大4回まで取得可能になるということです。

  1. 出生時育児休業(産後パパ育休)とは異なり、2回分割する場合もまとめて申し出る必要はありません。
  2. 1歳6か月、2歳までの育児休業は分割できません(現行と同じ)。
  3. 分割化に伴い、休業開始予定日の繰上げ変更、休業終了予定日の繰下げ変更も、1回の休業につき、繰上げ1回、繰下げ1回ずつ可能です。

1歳以降の育児休業

1歳以降の育児休業の開始日の柔軟化により、1歳以降の育児休業期間の途中で夫婦で交代することが可能になります。

保育所に入所できない等の理由で1歳以降に延長した場合の育児休業開始日について

令和4年10月以降 育児休業開始日の柔軟化を活用した例

2023年4月施行の内容

⑤育児休業取得状況の公表の義務化

常時雇用する労働者が1,000人を超える事業主は、育児休業等の取得の状況を年1回公表することが義務付けられます。

男性の育児休業取得促進のために、来年度から規模の大きい企業において男性の育児休業等取得率の公表が義務付けられます。育児休業は「子どもを養育するための休業」であり、男女がともに育児に主体的に取り組むために、労働者が希望するとおりの期間の休業を申出・取得できるよう、事業主は上司・同僚の理解も含めて育児休業を取得しやすい雇用環境を整備することが重要です。育児休業を取得しやすい雇用環境整備に取り組んだ結果としての育児休業等取得率を公表なので、社会全体の子育てに対する意識変化を表す指標となるのではないでしょうか。

保育園にはほぼ関係ない義務化ではありますが、制度のことは理解しておきましょう。また、他の制度同様だんだん条件が中小企業規模まで降りてくる可能性もあります。今後の制度の動向は見ておきたいものです。

そして公表が義務化されないとしても、園として自園の育児休業取得状況は把握しておきましょう。採用時に公表して女性はもちろん男性保育士も働きやすい環境だとアピールしても良いですし、仕事と生活を両立する支援を園として実施しているという事実によって、今いる職員が長く働けるイメージを持つことにもつながります。

新しい育休制度を理解し保護者も職員も支援する

男性の職員がいる園ではこれまで、男性の育児休業はどのくらい取得されてきたでしょうか。
常に人手不足な保育園では、男性保育士の育休は取らせてあげられないケースも多かったでしょう。しかし、乳幼児期の大切な時間に自分の子どもとしっかり関われることは、何にも代え難い経験です。普段の保育では経験できないことも多いでしょうし、そこで得た気づきが仕事である保育に活かせることもあるでしょう。
そして、組織としては職員の家庭や生活を支援することにもなります。人はプライベートがうまくいっていれば仕事にも集中できるものです。生活が安定していることはとても重要です。育休期間中はまさに新しい生活基盤を整える期間と言えるのではないでしょうか。長い育休取得は現場負担が大きくなる、というような短期的なマイナス面だけでなく、誰もが働きやすい職場づくりの一環である、という長期的なプラス面を捉え、ぜひ産後パパ育休、育児休業の分割取得を推奨してください。

保護者にも産休・育休制度を利用している方は大勢いるでしょう。
その方たちのために、保育園としてできることがあります。自治体によって育休中の保育園利用が認められない場合がありますが、そういった手続き上のことも日常的に保育園から発信できると良いでしょう。
保護者の方が疑問に感じるであろうこと、例えば上の子は預けたまま育休制度を使えるのか、両親ともに育休制度を使った場合はどうなのか、育休中も保育園利用が可能な場合にも制約や条件(短時間利用になるなど)はあるのか、育休から復帰する時は上の子と同じ保育園に預けたいが可能なのか、などを予め園側から説明しておくことができれば、安心して産休・育休に入れるでしょう。もちろん直接行政に問い合わせてもらわなければわからないこともあると思いますが、その場合も、保育園または保育士に相談することで、ある程度不安を軽減した状態を作ってあげたり、園から行政の担当者に繋いであげたりすることで家庭の子育て支援につなげることもできます。

そのためには、今後利用する家庭が増えるであろう産後パパ育休について、保育園の管理者はもちろん保育士もこの制度を理解している必要があります。就業規則の変更や労使協定の締結などの機会に職員に周知し共有することをお勧めいたします。

社会全体が子どもを育てるという意識向上に繋がる改正です。保育園という職場こそ、積極的に取り組んでみてはいかがでしょうか。

この記事の参考サイト
育児・介護休業法について

厚生労働省
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