保育とSDGs|今さら聞けないSDGsの基本と保育園ができる取り組み

保育とSDGs,保育園ができること

投稿日:2022年8月24日

目次

SDGsとは

見慣れた、あるいは耳慣れた言葉になってきた「SDGs」ですが改めて基本的な知識をおさらいしましょう。読み方は「エス・ディー・ジーズ」です。「Sustainable Development Goals」の略で、日本語にすると「接続可能な開発目標」という意味になります。SDGsは2015年9月に開催された国連サミットで採択された、2030年までにより良い世界を目指すための国際目標です。17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを掲げています。

17のゴールに設定されているのは、いわば世界共通の課題です。世界中には貧困や環境問題、飢餓やジェンダー平等など幅広い課題がありますが、どれも他人事ではありません。人類が将来の世代まで誰もが豊かに暮らせる地球を守るために、いまを生きる一人ひとりが自分ごととして課題解決に挑むために設定されました。そのロゴやアイコンは2030年の期限が迫るにつれて至る所で目にするようになったのではないでしょうか。

SDGsロゴ,SDGsアイコン

出典:2030アジェンダ

国際連合広報センター

17のゴールと169のターゲット

ではまず、なりたい姿としての17のゴールと、そのゴールを達成するためにより具体化した169のターゲットを改めて確認しましょう。

ゴール1:貧困をなくそう

あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる

1.12030年までに、現在 1 日 1.25 ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる。
1.22030年までに、各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にある、すべての年齢の男性、女性、子どもの割合を半減させる。
1.3各国において最低限の基準を含む適切な社会保護制度及び対策を実施し、2030年までに貧困層及び脆弱層に対し十分な保護を達成する。
1.42030年までに、貧困層及び脆弱層をはじめ、すべての男性及び女性が、基礎的サービスへのアクセス、土地及びその他の形態の財産に対する所有権と管理権限、相続財産、天然資源、適切な新技術、マイクロファイナンスを含む金融サービスに加え、経済的資源についても平等な権利を持つことができるように確保する。
1.52030年までに、貧困層や脆弱な状況にある人々の強靱性(レジリエンス)を構築し、気候変動に関連する極端な気象現象やその他の経済、社会、環境的ショックや災害に暴露や脆弱性を軽減する。
1.aあらゆる次元での貧困を終わらせるための計画や政策を実施するべく、後発開発途上国をはじめとする開発途上国に対して適切かつ予測可能な手段を講じるため、開発協力の強化などを通じて、さまざまな供給源からの相当量の資源の動員を確保する。
1.b貧困撲滅のための行動への投資拡大を支援するため、国、地域及び国際レベルで、貧困層やジェンダーに配慮した開発戦略に基づいた適正な政策的枠組みを構築する。

保育園にできること

子どもと家庭に寄り添い、子どもの貧困問題の解決に寄与することがこのゴールに向き合うことです。保育園を利用する家庭には様々な事情があります。外からは見えにくい相対的貧困家庭が多い日本では、家庭とつながりを持てる保育園の存在は重要です。子どもや保護者の日々の様子に気を配り必要に応じて適切な支援に結びつけることは児童福祉施設としての保育園の役割です。家庭を支援しながら、保育園では子どもが安心して過ごせるように関わります。相対的貧困といわれる家庭の支援には保護者の就労支援なども必要な場合があります。そのような場合にも対応できるよう園として行政や専門機関との連携を図れるよう予めネットワークを形成しておくと良いでしょう。

ゴール2:飢餓をゼロに

飢餓をゼロに,SDGs2

飢餓を終わらせ、食糧安全保障および栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進す

2.12030年までに、飢餓を撲滅し、すべての人々、特に貧困層及び幼児を含む脆弱な立場にある人々が一年中安全かつ栄養のある食料を十分得られるようにする。  
2.25歳未満の子どもの発育阻害や消耗性疾患について国際的に合意されたターゲットを2025年までに達成するなど、2030年までにあらゆる形態の栄養不良を解消し、若年女子、妊婦・授乳婦及び高齢者の栄養ニーズへの対処を行う。
2.32030年までに、土地、その他の生産資源や、投入財、知識、金融サービス、市場及び高付加価値化や非農業雇用の機会への確実かつ平等なアクセスの確保などを通じて、女性、先住民、家族農家、牧畜民及び漁業者をはじめとする小規模食料生産者の農業生産性及び所得を倍増させる。
2.42030年までに、生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象現象、干ばつ、洪水及びその他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する。
2.52020年までに、国、地域及び国際レベルで適正に管理及び多様化された種子・植物バンクなども通じて、種子、栽培植物、飼育・家畜化された動物及びこれらの近縁野生種の遺伝的多様性を維持し、国際的合意に基づき、遺伝資源及びこれに関連する伝統的な知識へのアクセス及びその利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分を促進する。
2.a開発途上国、特に後発開発途上国における農業生産能力向上のために、国際協力の強化などを通じて、農村インフラ、農業研究・普及サービス、技術開発及び植物・家畜のジーン・バンクへの投資の拡大を図る。
2.bドーハ開発ラウンドの決議に従い、すべての形態の農産物輸出補助金及び同等の効果を持つすべての輸出措置の並行的撤廃などを通じて、世界の農産物市場における貿易制限や歪みを是正及び防止する。
2.c食料価格の極端な変動に歯止めをかけるため、食料市場及びデリバティブ市場の適正な機能を確保するための措置を講じ、食料備蓄などの市場情報への適時のアクセスを容易にする。

保育園にできること

栄養に配慮した給食の提供と食育を通した食の大切さを子どもたちに伝えていくことがこのゴールに向き合うことです。飢餓といえば発展途上国の問題で日本では食べるのに困るという経験をする子どもはいないと思われがちですが、実は日本にも相対的貧困の家庭は少なくありません。一方で大量のフードロスがあるのも事実です。これは飲食店やスーパーなどの事業者だけの問題ではなく家庭からも多く発生しています。また、食べるものがあるのに栄養失調になる子どももいます。食事ではなく菓子でお腹を満たしたり同じものばかり摂取したりするなどの偏った食事がその原因です。このような現状の課題を理解した上で、子どもたちには「食」の大切さを伝え興味を持たせましょう。食べるということは人間の活動の根源であり子どもの発育の基本となる上、食育は幅広い体験と学びにつながる分野です。このテーマだけで様々な視点から保育を展開させられるでしょう。

ゴール3:すべての人に健康と福祉を

あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する

3.12030年までに、世界の妊産婦の死亡率を出生10万人当たり70人未満に削減する。
3.2すべての国が新生児死亡率を少なくとも出生1,000件中12件以下まで減らし、5歳以下死亡率を少なくとも出生 1,000件中25件以下まで減らすことを目指し、2030年までに、新生児及び5歳未満児の予防可能な死亡を根絶する。
3.32030年までに、エイズ、結核、マラリア及び顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに肝炎、水系感染症及びその他の感染症に対処する。
3.42030年までに、非感染性疾患による若年死亡率を、予防や治療を通じて3分の1減少させ、精神保健及び福祉を促進する。
3.5薬物乱用やアルコールの有害な摂取を含む、物質乱用の防止・治療を強化する。
3.62020年までに、世界の道路交通事故による死傷者を半減させる。
3.72030年までに、家族計画、情報・教育及び性と生殖に関する健康の国家戦略・計画への組み入れを含む、性と生殖に関する保健サービスをすべての人々が利用できるようにする。
3.8すべての人々に対する財政リスクからの保護、質の高い基礎的な保健サービスへのアクセス及び安全で効果的かつ質が高く安価な必須医薬品とワクチンへのアクセスを含む、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成する。
3.92030年までに、有害化学物質、ならびに大気、水質及び土壌の汚染による死亡及び疾病の件数を大幅に減少させる。
3.aすべての国々において、たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約の実施を適宜強化する。
3.b主に開発途上国に影響を及ぼす感染性及び非感染性疾患のワクチン及び医薬品の研究開発を支援する。また、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)及び公衆の健康に関するドーハ宣言に従い、安価な必須医薬品及びワクチンへのアクセスを提供する。同宣言は公衆衛生保護及び、特にすべての人々への医薬品のアクセス提供にかかわる「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)」の柔軟性に関する規定を最大限に行使する開発途上国の権利を確約したものである。
3.c開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国において保健財政及び保健人材の採用、能力開発・訓練及び定着を大幅に拡大させる。
3.dすべての国々、特に開発途上国の国家・世界規模な健康危険因子の早期警告、危険因子緩和及び危険因子管理のための能力を強化する。

保育園にできること

子どもの最善の利益を確保し、子どもたちが心身ともに健やかに育つ場を提供することがこのゴールに向き合うことです。子どもたちの健康を守り安心安全な保育を提供することは日々の仕事の中で実践していることでしょう。高い専門性を有した職員が子どもの発達を理解した上で運動や食事による丈夫な身体づくりのサポートをします。また、家庭の子育て支援を行うことも児童福祉施設としての重要な役割です。さらに、そんな保育園自体が持続可能な施設づくりに取り組むことが必要です。質の高い保育、人材育成、施設経営の3つの柱すべてにおいて施策を実行し、選ばれる園づくりを行うことが求められています。

ゴール4:質の高い教育をみんなに

すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し生涯学習の機会を促進する

4.12030年までに、すべての子どもが男女の区別なく、適切かつ効果的な学習成果をもたらす、無償かつ公正で質の高い初等教育及び中等教育を修了できるようにする。
4.22030年までに、すべての子どもが男女の区別なく、質の高い乳幼児の発達・ケア及び就学前教育にアクセスすることにより、初等教育を受ける準備が整うようにする。
4.32030年までに、すべての人々が男女の区別なく、手の届く質の高い技術教育・職業教育及び大学を含む高等教育への平等なアクセスを得られるようにする。
4.42030年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。
4.52030年までに、教育におけるジェンダー格差を無くし、障害者、先住民及び脆弱な立場にある子どもなど、脆弱層があらゆるレベルの教育や職業訓練に平等にアクセスできるようにする。
4.62030年までに、すべての若者及び大多数(男女ともに)の成人が、読み書き能力及び基本的計算能力を身に付けられるようにする。
4.72030年までに、持続可能な開発のための教育及び持続可能なライフスタイル、人権、男女の平等、平和及び非暴力的文化の推進、グローバル・シチズンシップ、文化多様性と文化の持続可能な開発への貢献の理解の教育を通して、全ての学習者が、持続可能な開発を促進するために必要な知識及び技能を習得できるようにする。
4.a子ども、障害及びジェンダーに配慮した教育施設を構築・改良し、すべての人々に安全で非暴力的、包摂的、効果的な学習環境を提供できるようにする。
4.b2020年までに、開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国、ならびにアフリカ諸国を対象とした、職業訓練、情報通信技術(ICT)、技術・工学・科学プログラムなど、先進国及びその他の開発途上国における高等教育の奨学金の件数を全世界で大幅に増加させる。
4.c2030年までに、開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国における教員研修のための国際協力などを通じて、質の高い教員の数を大幅に増加させる。 

保育園にできること

質の高い保育を提供することそのものがこのゴールに向き合うことです。子ども一人ひとりの育ちに合わせて必要な保育を提供し健全な発達をサポートすること、一人ひとりの可能性を信じ視野や世界観を広げるアプローチをすること、子どもたちのための環境づくりをすることが求められています。そして保育は園内で完結するものではなく、子どもたちを支える保護者や地域との連携も必要です。今後ますます保育園の役割は大きいものとなるでしょう。その役割を果たすためには保育者の教育も欠かせません。保育者自身が常に学び、新しい知識や広い視野を持つこと、経験年数に応じた学びによって専門性を高めることが重要です。つまり、子どもたちだけでなく職員にも質の高い教育機会を提供するということです。選ばれ続ける園づくりのために、さらなる保育の質の向上が期待されます。

ゴール5:ジェンダー平等を実現しよう

ジェンダー平等を達成し、すべての女性および女児の能力強化を行う

5.1あらゆる場所におけるすべての女性及び女児に対するあらゆる形態の差別を撤廃する。
5.2人身売買や性的、その他の種類の搾取など、すべての女性及び女児に対する、公共・私的空間におけるあらゆる形態の暴力を排除する。
5.3未成年者の結婚、早期結婚、強制結婚及び女性器切除など、あらゆる有害な慣行を撤廃する。
5.4公共のサービス、インフラ及び社会保障政策の提供、ならびに各国の状況に応じた世帯・家族内における責任分担を通じて、無報酬の育児・介護や家事労働を認識・評価する。
5.5政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参画及び平等なリーダーシップの機会を確保する。
5.6国際人口・開発会議(ICPD)の行動計画及び北京行動綱領、ならびにこれらの検証会議の成果文書に従い、性と生殖に関する健康及び権利への普遍的アクセスを確保する。
5.a女性に対し、経済的資源に対する同等の権利、ならびに各国法に従い、オ ーナーシップ及び土地その他の財産、金融サービス、相続財産、天然資源に対するアクセスを与えるための改革に着手する。
5.b女性の能力強化促進のため、ICTをはじめとする実現技術の活用を強化する。
5.cジェンダー平等の促進、ならびにすべての女性及び女子のあらゆるレベルでの能力強化のための適正な政策及び拘束力のある法規を導入・強化する。

保育園にできること

性別の固定観念にとらわれない保育を提供し、子ども一人ひとりの個を尊重して関わることがこのゴールに向き合うことです。色による区別や男の子らしさ女の子らしさといった決めつけをしてしまわないよう保育者一人ひとりが意識することがまず必要です。一方で性差に過敏に反応することも注意が必要です。大切なのはその子どもの個性や気持ち、価値観を尊重することであって、子どもにジェンダーレスを強要することではありません。それは誰であっても一人の人間として対等に接し、偏った価値観を押し付けないということではないでしょうか。ですから、保育園においては職員間でよく話し合い、この行事のこの部分には違和感がある、この保育だとこう感じる子もいるのでは、とジェンダー平等の視点に立って意見を交わすことが重要です。正しい間違っているという話ではなく、多様な価値観に気づき認め合うための考え方です。そんな保育の提供が子どもたちの主体性を育むことにつながるでしょう。

ゴール6:安全な水とトイレを世界中に

すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する

6.12030年までに、すべての人々の、安全で安価な飲料水の普遍的かつ衡平なアクセスを達成する。
6.22030年までに、すべての人々の、適切かつ平等な下水施設・衛生施設へのアクセスを達成し、野外での排泄をなくす。女性及び女児、ならびに脆弱な立場にある人々のニーズに特に注意を払う。
6.32030年までに、汚染の減少、投棄の廃絶と有害な化学物・物質の放出の最小化、未処理の排水の割合半減及び再生利用と安全な再利用の世界的規模で大幅に増加させることにより、水質を改善する。
6.42030年までに、全セクターにおいて水利用の効率を大幅に改善し、淡水の持続可能な採取及び供給を確保し水不足に対処するとともに、水不足に悩む人々の数を大幅に減少させる。
6.52030年までに、国境を越えた適切な協力を含む、あらゆるレベルでの統合水資源管理を実施する。
6.62020年までに、山地、森林、湿地、河川、帯水層、湖沼を含む水に関連する生態系の保護・回復を行う。
6.a2030年までに、集水、海水淡水化、水の効率的利用、排水処理、リサイクル・再利用技術を含む開発途上国における水と衛生分野での活動と計画を対象とした国際協力と能力構築支援を拡大する。
6.b水と衛生の管理向上における地域コミュニティの参加を支援・強化する。

保育園にできること

普段何気なく使っている水の大切さを伝え、安全な水と衛生環境について子どもたちと学ぶことがこのゴールに向き合うことです。日本では蛇口をひねれば水が手に入ったり水道水を飲むことができたりします。毎日キレイな水洗トイレを使うことができます。世界の国々と比較してその環境が当たり前ではないことを伝え、子どもの頃から節水の大切さを学ぶことが必要です。その際は、どうして生きていくのに水が必要なのか、水はどのように循環しているのかなど、子どもたちの知的好奇心を刺激しながら楽しんで学びを深めていきましょう。また、園として衛生環境を整備することも重要です。衛生管理について職員が学んだりマニュアルを整えたりしながら、子どもたちに安心と安全を提供しましょう。

ゴール7:エネルギーをみんなにそしてクリーンに

すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する

7.12030年までに、安価かつ信頼できる現代的エネルギーサービスへの普遍的アクセスを確保する。
7.22030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。
7.32030年までに、世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる。
7.a2030年までに、再生可能エネルギー、エネルギー効率及び先進的かつ環境負荷の低い化石燃料技術などのクリーンエネルギーの研究及び技術へのアクセスを促進するための国際協力を強化し、エネルギー関連インフラとクリーンエネルギー技術への投資を促進する。
7.b2030年までに、各々の支援プログラムに沿って開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国、内陸開発途上国のすべての人々に現代的で持続可能なエネルギーサービスを供給できるよう、インフラ拡大と技術向上を行う。

保育園にできること

エネルギーの大切さを子どもたちと学び、限りある資源の使い方について共に考えていくことがこのゴールに向き合うことです。電気が当たり前のように使える今、エネルギーの大切さを実感する機会は意図的に作らなければ学べないでしょう。電気をつくるために必要な資源が有限であること、今は良くても将来困る可能性があることなど、エネルギーの仕組みを知って初めて節電の意味を理解できたり、地球の環境問題について考えたりするきっかけになります。クリーンエネルギーなど様々なものが資源になり得ることや、カーボンニュートラルの推進のように世界の動向を知ることは子どもたちの世界観を広げることにもつながります。

ゴール8:働きがいも経済成長も

包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する

8.1各国の状況に応じて、一人当たり経済成長率を持続させる。特に後発開発途上国は少なくとも年率7%の成長率を保つ。
8.2高付加価値セクターや労働集約型セクターに重点を置くことなどにより、多様化、技術向上及びイノベーションを通じた高いレベルの経済生産性を達成する。
8.3生産活動や適切な雇用創出、起業、創造性及びイノベーションを支援する開発重視型の政策を促進するとともに、金融サービスへのアクセス改善などを通じて中小零細企業の設立や成長を奨励する。
8.42030年までに、世界の消費と生産における資源効率を漸進的に改善させ、先進国主導の下、持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組みに従い、経済成長と環境悪化の分断を図る。
8.52030年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一労働同一賃金を達成する。
8.62020年までに、就労、就学及び職業訓練のいずれも行っていない若者の割合を大幅に減らす。
8.7強制労働を根絶し、現代の奴隷制、人身売買を終らせるための緊急かつ効果的な措置の実施、最悪な形態の児童労働の禁止及び撲滅を確保する。2025年までに児童兵士の募集と使用を含むあらゆる形態の児童労働を撲滅する。
8.8移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある労働者など、すべての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する。
8.92030年までに、雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業を促進するための政策を立案し実施する。
8.10国内の金融機関の能力を強化し、すべての人々の銀行取引、保険及び金融サービスへのアクセスを促進・拡大する。
8.a後発開発途上国への貿易関連技術支援のための拡大統合フレームワ ーク(EIF)などを通じた支援を含む、開発途上国、特に後発開発途上国に対する貿易のための援助を拡大する。
8.b2020年までに、若年雇用のための世界的戦略及び国際労働機関(ILO)の仕事に関する世界協定の実施を展開・運用化する。

保育園にできること

職員一人ひとりにとって働きがいのある職場づくりを行うことがこのゴールに向き合うことです。一人ひとりの価値観やライフスタイルに合わせて多様な働き方が選択できるなどの働きやすさと、仕事のそのもののやりがいを兼ね備えた保育園づくりが求められています。サービス残業、持ち帰り仕事などの是正はもちろんのこと、雇用形態に関わらず同一労働同一賃金になるような賃金体系の見直しや、女性の多い職場ならではのライフイベントに対応した柔軟な勤務体制の構築など、施設長が行うべき取り組みもたくさんあります。処遇改善に積極的に取り組むこともその一つです。加えて、職員一人ひとりの価値観や考え方を知り、やりがいを持って保育に取り組めるようなマネジメント・人材育成も必要です。園の方針を明示し職員一丸となって理念を実現できるような風土を醸成しましょう。

ゴール9:産業と技術革新の基盤をつくろう

強靭(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る

9.1すべての人々に安価で公平なアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援するために、地域・越境インフラを含む質の高い、信頼でき、持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラを開発する。
9.2包摂的かつ持続可能な産業化を促進し、2030年までに各国の状況に応じて雇用及びGDPに占める産業セクターの割合を大幅に増加させる。後発開発途上国については同割合を倍増させる。
9.3特に開発途上国における小規模の製造業その他の企業の、安価な資金貸付などの金融サービスやバリューチェーン及び市場への統合へのアクセスを拡大する。
9.42030年までに、資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる。すべての国々は各国の能力に応じた取組を行う。
9.52030年までにイノベーションを促進させることや100万人当たりの研究開発従事者数を大幅に増加させ、また官民研究開発の支出を拡大させるなど、開発途上国をはじめとするすべての国々の産業セクターにおける科学研究を促進し、技術能力を向上させる。
9.aアフリカ諸国、後発開発途上国、内陸開発途上国及び小島嶼開発途上国への金融・テクノロジー・技術の支援強化を通じて、開発途上国における持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラ開発を促進する。
9.b産業の多様化や商品への付加価値創造などに資する政策環境の確保などを通じて、開発途上国の国内における技術開発、研究及びイノベーションを支援する。
9.c後発開発途上国において情報通信技術へのアクセスを大幅に向上させ、2020年までに普遍的かつ安価なインターネット・アクセスを提供できるよう図る。

保育園にできること

新しいものを積極的に取り入れ、子どもたちの知的好奇心や探究心を育むことがこのゴールに向き合うことです。古き良きものを大切にすることはもちろん必要ですが、未来を生きる子どもたちに合わせて新しい技術や今の時代にあったものを柔軟に保育に取り入れることも必要です。特に進歩めざましい科学・IT分野に関する学びは今後より重要性を増していく上、あそびを通して学べるものです。年齢や興味に合わせて子どもたちの視野を広げられるよう、大人こそ最新の知識にアップデートしていきましょう。職員のリカレント教育に力を入れることもおすすめです。

ゴール10:人や国の不平等をなくそう

各国内および各国間の不平等を是正する

10.12030年までに、各国の所得下位40%の所得成長率について、国内平均を上回る数値を漸進的に達成し、持続させる。
10.22030年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、すべての人々の能力強化及び社会的、経済的及び政治的な包含を促進する。
10.3差別的な法律、政策及び慣行の撤廃、ならびに適切な関連法規、政策、行動の促進などを通じて、機会均等を確保し、成果の不平等を是正する。
10.4税制、賃金、社会保障政策をはじめとする政策を導入し、平等の拡大を漸進的に達成する。
10.5世界金融市場と金融機関に対する規制とモニタリングを改善し、こうした規制の実施を強化する。
10.6地球規模の国際経済・金融制度の意思決定における開発途上国の参加や発言力を拡大させることにより、より効果的で信用力があり、説明責任のある正当な制度を実現する。
10.7計画に基づき良く管理された移民政策の実施などを通じて、秩序のとれた、安全で規則的かつ責任ある移住や流動性を促進する。
10.a世界貿易機関(WTO)協定に従い、開発途上国、特に後発開発途上国に対する特別かつ異なる待遇の原則を実施する。
10.b各国の国家計画やプログラムに従って、後発開発途上国、アフリカ諸国、小島嶼開発途上国及び内陸開発途上国を始めとする、ニーズが最も大きい国々への、政府開発援助(ODA)及び海外直接投資を含む資金の流入を促進する。
10.c2030年までに、移住労働者による送金コストを 3%未満に引き下げ、コストが 5%を越える送金経路を撤廃する。

保育園にできること

年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、経済的地位やその他の状況に関係なく、職員が誰もに平等に関わること、その精神を子どもたちに見せることがこのゴールに向き合うことです。差別をするつもりがなくても無意識のうちに区別してしまうことがあります。まず大切なのはそれを意識することです。どういうことが不平等な関わりにあたるのか職員教育を行い園の現状を顧みることや、異年齢保育や集団生活などを通じて子どもたちに個々を尊重し多様性を認め合うことを自然と身につけられるように関わります。園によっては国籍や言語のちがう保護者や子どもも今後増えるでしょうし、ますます価値観は多様化することが予想されます。どんな人とでも受容的かつ対等な人間関係を築けるよう、平等とは何かについて考えることが必要です。そんな大人の振る舞いを子どもたちはよく見ています。

ゴール11:住み続けられるまちづくりを

包摂的で安全かつ強靭(レジリエント)で持続可能な都市および人間居住を実現する

11.12030年までに、すべての人々の、適切、安全かつ安価な住宅及び基本的サービスへのアクセスを確保し、スラムを改善する。
11.22030年までに、脆弱な立場にある人々、女性、子ども、障害者及び高齢者のニーズに特に配慮し、公共交通機関の拡大などを通じた交通の安全性改善により、すべての人々に、安全かつ安価で容易に利用できる、持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する。
11.32030年までに、包摂的かつ持続可能な都市化を促進し、すべての国々の参加型、包摂的かつ持続可能な人間居住計画・管理の能力を強化する。
11.4世界の文化遺産及び自然遺産の保護・保全の努力を強化する。
11.52030年までに、貧困層及び脆弱な立場にある人々の保護に焦点をあてながら、水関連災害などの災害による死者や被災者数を大幅に削減し、世界の国内総生産比で直接的経済損失を大幅に減らす。
11.62030年までに、大気の質及び一般並びにその他の廃棄物の管理に特別な注意を払うことによるものを含め、都市の一人当たりの環境上の悪影響を軽減する。
11.72030年までに、女性、子ども、高齢者及び障害者を含め、人々に安全で包摂的かつ利用が容易な緑地や公共スペースへの普遍的アクセスを提供する。
11.a各国・地域規模の開発計画の強化を通じて、経済、社会、環境面における都市部、都市周辺部及び農村部間の良好なつながりを支援する。
11.b2020年までに、包含、資源効率、気候変動の緩和と適応、災害に対する強靱さ(レジリエンス)を目指す総合的政策及び計画を導入・実施した都市及び人間居住地の件数を大幅に増加させ、仙台防災枠組2015-2030に沿って、あらゆるレベルでの総合的な災害リスク管理の策定と実施を行う。
11.c財政的及び技術的な支援などを通じて、後発開発途上国における現地の資材を用いた、持続可能かつ強靱(レジリエント)な建造物の整備を支援する。

保育園にできること

地域における保育園の立ち位置を明確にし、地域に開かれた園づくりを行うことがこのゴールに向き合うことです。いまや保育園に求められる役割は在園児の教育保育を担うだけにとどまりません。家庭の子育て支援はもちろん、地域の子育て支援も担う機能が求められています。さらには子どもたちが健やかに育っていくための環境づくりという点で地域づくりも欠かせないことから、保育園には地域ネットワークをつくるためのハブになることが期待されています。今後は園の利用者だけでなく、地域から必要とされる「選ばれる園」づくりが重要です。

ゴール12:つくる責任つかう責任

持続可能な生産消費形態を確保する

12.1開発途上国の開発状況や能力を勘案しつつ、持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組み(10YFP)を実施し、先進国主導の下、すべての国々が対策を講じる。
12.22030年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する。
12.32030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる。
12.42020年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質やすべての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。
12.52030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。
12.6特に大企業や多国籍企業などの企業に対し、持続可能な取り組みを導入し、持続可能性に関する情報を定期報告に盛り込むよう奨励する。
12.7国内の政策や優先事項に従って持続可能な公共調達の慣行を促進する。
12.82030年までに、人々があらゆる場所において、持続可能な開発及び自然と調和したライフスタイルに関する情報と意識を持つようにする。
12.a開発途上国に対し、より持続可能な消費・生産形態の促進のための科学的・技術的能力の強化を支援する。
12.b雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業に対して持続可能な開発がもたらす影響を測定する手法を開発・導入する。
12.c開発途上国の特別なニーズや状況を十分考慮し、貧困層やコミュニティを保護する形で開発に関する悪影響を最小限に留めつつ、税制改正や、有害な補助金が存在する場合はその環境への影響を考慮してその段階的廃止などを通じ、各国の状況に応じて、市場のひずみを除去することで、浪費的な消費を奨励する、化石燃料に対する非効率な補助金を合理化する。

保育園にできること

ゴミの削減や再利用などを通して、子どもたちに「もったいない」精神を伝えることがこのゴールに向き合うことです。言い換えれば、ものに感謝し大切にする心を育むことです。これは日常の保育の中で伝える機会がたくさんあるでしょう。そして園全体でゴミを減らし再利用する取り組みを行いましょう。ゴミの排出量は子どもたちより大人の方がはるかに多いでしょう。壊れたものを修理して使う、いらなくなった玩具や子供服などを地域から寄付してもらう…無駄をなくし工夫によってものを使い切る姿勢は、子どもたちにものを大切にすることを教える何よりの方法です。ICT化を進めてペーパーレスを推進するのも無駄を減らす工夫です。新しいものを取り入れながら古いものを大切にすること、園内にとどまらず地域にリサイクル・リユースの輪を作ることも有効でしょう。

ゴール13:気候変動に具体的な対策を

気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる

13.1すべての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強靱性(レジリエンス)及び適応の能力を強化する。
13.2気候変動対策を国別の政策、戦略及び計画に盛り込む。
13.3気候変動の緩和、適応、影響軽減及び早期警戒に関する教育、啓発、人的能力及び制度機能を改善する。
13.a重要な緩和行動の実施とその実施における透明性確保に関する開発途上国のニーズに対応するため、2020年までにあらゆる供給源から年間1,000億ドルを共同で動員するという、UNFCCCの先進締約国によるコミットメントを実施するとともに、可能な限り速やかに資本を投入して緑の気候基金を本格始動させる。
13.b後発開発途上国及び小島嶼開発途上国において、女性や青年、地方及び社会的に疎外されたコミュニティに焦点を当てることを含め、気候変動関連の効果的な計画策定と管理のための能力を向上するメカニズムを推進する。

保育園にできること

季節ごとの気候の変化を感じながら、異常気象や自然災害への対策について子どもたちが自分で考えられるように導くことがこのゴールに向き合うことです。毎日の天気という身近な事象を上手に使って地球温暖化の仕組みや対策について子どもたちと考えたり、園として講じている災害対策を子どもたちを巻き込む形でより強化したりして、今後の変化にも適応できるよう備えておくことが大切です。特に自然災害はいつどこで想定外の規模のものが起きてもおかしくありません。職員一人ひとりが当事者意識を持って、いざという時に子どもたちを守れるようにしておくことはもちろん、子どもたち自身にも幼児中心に自分の身を守る術を身につけるように指導することが重要です。そのためには、園内だけでなく家庭も含めた地域コミュニティにおける防災活動、避難訓練などに取り組むことも必要でしょう。

ゴール14:海の豊かさを守ろう

持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する

14.12025年までに、海洋ごみや富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する。
14.22020年までに、海洋及び沿岸の生態系に関する重大な悪影響を回避するため、強靱性(レジリエンス)の強化などによる持続的な管理と保護を行い、健全で生産的な海洋を実現するため、海洋及び沿岸の生態系の回復のための取組を行う。
14.3あらゆるレベルでの科学的協力の促進などを通じて、海洋酸性化の影響を最小限化し、対処する。
14.4水産資源を、実現可能な最短期間で少なくとも各資源の生物学的特性によって定められる最大持続生産量のレベルまで回復させるため、2020年までに、漁獲を効果的に規制し、過剰漁業や違法・無報告・無規制(IUU)漁業及び破壊的な漁業慣行を終了し、科学的な管理計画を実施する。
14.52020年までに、国内法及び国際法に則り、最大限入手可能な科学情報に基づいて、少なくとも沿岸域及び海域の 10パーセントを保全する。
14.6開発途上国及び後発開発途上国に対する適切かつ効果的な、特別かつ異なる待遇が、世界貿易機関(WTO)漁業補助金交渉の不可分の要素であるべきことを認識した上で、2020年までに、過剰漁獲能力や過剰漁獲につながる漁業補助金を禁止し、違法・無報告・無規制(IUU)漁業につながる補助金を撤廃し、同様の新たな補助金の導入を抑制する**。
**現在進行中の世界貿易機関(WTO)交渉およびWTOドーハ開発アジェンダ、ならびに香港閣僚宣言のマンデートを考慮。
14.72030年までに、漁業、水産養殖及び観光の持続可能な管理などを通じ、小島嶼開発途上国及び後発開発途上国の海洋資源の持続的な利用による経済的便益を増大させる。
14.a海洋の健全性の改善と、開発途上国、特に小島嶼開発途上国および後発開発途上国の開発における海洋生物多様性の寄与向上のために、海洋技術の移転に関するユネスコ政府間海洋学委員会の基準・ガイドラインを勘案しつつ、科学的知識の増進、研究能力の向上、及び海洋技術の移転を行う。
14.b小規模・沿岸零細漁業者に対し、海洋資源及び市場へのアクセスを提供する。
14.c「我々の求める未来」のパラ158において想起されるとおり、海洋及び海洋資源の保全及び持続可能な利用のための法的枠組みを規定する海洋法に関する国際連合条約(UNCLOS)に反映されている国際法を実施することにより、海洋及び海洋資源の保全及び持続可能な利用を強化する。

保育園にできること

海洋汚染などの環境問題や海の生態系について子どもたちが学べるように、身近なものに置き換えて海の大切さを伝えることがこのゴールに向き合うことです。海洋プラスチックの問題は私たちの生活とも密接に関わっています。プラスチックとはどういうもので私たちの身近の何に使われているのか、ゴミの分別なども学びの機会になります。普段目にすることのない海の中に住まう生き物について子どもたちの好奇心を高めることも有効です。園外保育で水族館などに行くことがあればより理解も深まるでしょう。ここで大切なのは、子どもたちに課題意識を持ってもらうことではなく「海が好き」という感覚を持ってもらうことです。海を守りたいという気持ちを育むことが始まりです。

ゴール15:陸の豊かさも守ろう

陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、並びに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する

15.12020年までに、国際協定の下での義務に則って、森林、湿地、山地及び乾燥地をはじめとする陸域生態系と内陸淡水生態系及びそれらのサービスの保全、回復及び持続可能な利用を確保する。
15.22020年までに、あらゆる種類の森林の持続可能な経営の実施を促進し、森林減少を阻止し、劣化した森林を回復し、世界全体で新規植林及び再植林を大幅に増加させる。
15.32030年までに、砂漠化に対処し、砂漠化、干ばつ及び洪水の影響を受けた土地などの劣化した土地と土壌を回復し、土地劣化に荷担しない世界の達成に尽力する。
15.42030年までに持続可能な開発に不可欠な便益をもたらす山地生態系の能力を強化するため、生物多様性を含む山地生態系の保全を確実に行う。
15.5自然生息地の劣化を抑制し、生物多様性の損失を阻止し、2020年までに絶滅危惧種を保護し、また絶滅防止するための緊急かつ意味のある対策を講じる。
15.6国際合意に基づき、遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分を推進するとともに、遺伝資源への適切なアクセスを推進する。
15.7保護の対象となっている動植物種の密猟及び違法取引を撲滅するための緊急対策を講じるとともに、違法な野生生物製品の需要と供給の両面に対処する。
15.82020年までに、外来種の侵入を防止するとともに、これらの種による陸域・海洋生態系への影響を大幅に減少させるための対策を導入し、さらに優先種の駆除または根絶を行う。
15.92020年までに、生態系と生物多様性の価値を、国や地方の計画策定、開発プロセス及び貧困削減のための戦略及び会計に組み込む。
15.a生物多様性と生態系の保全と持続的な利用のために、あらゆる資金源からの資金の動員及び大幅な増額を行う。
15.b保全や再植林を含む持続可能な森林経営を推進するため、あらゆるレベルのあらゆる供給源から、持続可能な森林経営のための資金の調達と開発途上国への十分なインセンティブ付与のための相当量の資源を動員する。
15.c持続的な生計機会を追求するために地域コミュニティの能力向上を図る等、保護種の密猟及び違法な取引に対処するための努力に対する世界的な支援を強化する。

保育園にできること

子どもたちに緑や生命の大切さを伝え共に守ろうとすることがこのゴールに向き合うことです。園庭やよく行く公園などで樹木や植物のことを知ったり実際に育ててみたりするのも良い経験になります。昆虫や動物など生き物に興味を持つ子どもたちも多いはずです。子どもたちの好奇心を手がかりに「いのち」の大切さを実感できる体験をさせられると良いでしょう。絵本や図鑑といった学びと実体験のあそびを組み合わせられると効果的です。また、地域住民と共にその地域の緑化活動を行うなど園内にとどまらない取り組みができれば、コミュニティのハブとして保育園が機能することにもつながります。

ゴール16:平和と公正をすべての人に

持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する

16.1あらゆる場所において、すべての形態の暴力及び暴力に関連する死亡率を大幅に減少させる。
16.2子どもに対する虐待、搾取、取引及びあらゆる形態の暴力及び拷問を撲滅する。
16.3国家及び国際的なレベルでの法の支配を促進し、すべての人々に司法への平等なアクセスを提供する。
16.42030年までに、違法な資金及び武器の取引を大幅に減少させ、奪われた財産の回復及び返還を強化し、あらゆる形態の組織犯罪を根絶する。
16.5あらゆる形態の汚職や贈賄を大幅に減少させる。
16.6あらゆるレベルにおいて、有効で説明責任のある透明性の高い公共機関を発展させる。
16.7あらゆるレベルにおいて、対応的、包摂的、参加型及び代表的な意思決定を確保する。
16.8グローバル・ガバナンス機関への開発途上国の参加を拡大・強化する。
16.92030年までに、すべての人々に出生登録を含む法的な身分証明を提供する。
16.10国内法規及び国際協定に従い、情報への公共アクセスを確保し、基本的自由を保障する。
16.a特に開発途上国において、暴力の防止とテロリズム・犯罪の撲滅に関するあらゆるレベルでの能力構築のため、国際協力などを通じて関連国家機関を強化する。
16.b持続可能な開発のための非差別的な法規および政策を推進し、実施する。

保育園にできること

子どもの人権を尊重し、虐待や差別、偏見のない環境をつくることがこのゴールに向き合うことです。保育者一人ひとりが正しい倫理観のもとに子どもたちに向き合い、先入観や自分だけの価値観にとらわれずに子どものありのままの姿を受け止めるためには、保育者の定期的な教育も必要です。時代や環境に合わせて考え方をアップデートしなければ、気づかないうちに子どもたちを傷つけてしまうかもしれません。また、家庭や地域に目を配るのも保育園の大事な役割です。虐待の早期発見や虐待が起こらないように保護者をケアすることも保育園ならできるはずです。誰もが心穏やかに平和な日々を送れることを目指します。

ゴール17:パートナーシップで目標を達成しよう

持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する

17.1課税及び徴税能力の向上のため、開発途上国への国際的な支援なども通じて、国内資源の動員を強化する。
17.2先進国は、開発途上国に対する ODA を GNI 比 0.7%に、後発開発途上国に対する ODA を GNI 比 0.15~0.20%にするという目標を達成するとの多くの国によるコミットメントを含む ODA に係るコミットメントを完全に実施する。ODA 供与国が、少なくとも GNI 比 0.20%の ODA を後発開発途上国に供与するという目標の設定を検討することを奨励する。
17.3複数の財源から、開発途上国のための追加的資金源を動員する。
17.4必要に応じた負債による資金調達、債務救済及び債務再編の促進を目的とした協調的な政策により、開発途上国の長期的な債務の持続可能性の実現を支援し、重債務貧困国(HIPC)の対外債務への対応により債務リスクを軽減する。
17.5後発開発途上国のための投資促進枠組みを導入及び実施する。
17.6科学技術イノベーション(STI)及びこれらへのアクセスに関する南北協力、南南協力及び地域的・国際的な三角協力を向上させる。また、国連レベルをはじめとする既存のメカニズム間の調整改善や、全世界的な技術促進メカニズムなどを通じて、相互に合意した条件において知識共有を進める。
17.7開発途上国に対し、譲許的・特恵的条件などの相互に合意した有利な条件の下で、環境に配慮した技術の開発、移転、普及及び拡散を促進する。
17.82017年までに、後発開発途上国のための技術バンク及び科学技術イノベ ーション能力構築メカニズムを完全運用させ、情報通信技術(ICT)をはじめとする実現技術の利用を強化する。
17.9すべての持続可能な開発目標を実施するための国家計画を支援するべく、南北協力、南南協力及び三角協力などを通じて、開発途上国における効果的かつ的をしぼった能力構築の実施に対する国際的な支援を強化する。
17.10ドーハ・ラウンド(DDA)交渉の結果を含めた WTO の下での普遍的でルールに基づいた、差別的でない、公平な多角的貿易体制を促進する。
17.11開発途上国による輸出を大幅に増加させ、特に 2020年までに世界の輸出に占める後発開発途上国のシェアを倍増させる。
17.12後発開発途上国からの輸入に対する特恵的な原産地規則が透明で簡略的かつ市場アクセスの円滑化に寄与するものとなるようにすることを含む世界貿易機関(WTO)の決定に矛盾しない形で、すべての後発開発途上国に対し、永続的な無税・無枠の市場アクセスを適時実施する。
17.13政策協調や政策の首尾一貫性などを通じて、世界的なマクロ経済の安定を促進する。
17.14持続可能な開発のための政策の一貫性を強化する。
17.15貧困撲滅と持続可能な開発のための政策の確立・実施にあたっては、各国の政策空間及びリーダーシップを尊重する。
17.16すべての国々、特に開発途上国での持続可能な開発目標の達成を支援すべく、知識、専門的知見、技術及び資金源を動員、共有するマルチステ ークホルダー・パートナーシップによって補完しつつ、持続可能な開発のためのグローバル・パートナーシップを強化する。
17.17さまざまなパートナーシップの経験や資源戦略を基にした、効果的な公的、官民、市民社会のパートナーシップを奨励・推進する。
17.182020年までに、後発開発途上国及び小島嶼開発途上国を含む開発途上国に対する能力構築支援を強化し、所得、性別、年齢、人種、民族、居住資格、障害、地理的位置及びその他各国事情に関連する特性別の質が高く、タイムリーかつ信頼性のある非集計型データの入手可能性を向上させる。
17.192030年までに、持続可能な開発の進捗状況を測るGDP以外の尺度を開発する既存の取組を更に前進させ、開発途上国における統計に関する能力構築を支援する。

保育園にできること

17のゴールに向けた取り組みを通して地域社会に貢献することこそが、このゴールに向き合うことになります。どのゴールも個だけでは達成できません。園内で協力し合い、外部機関と連携し合うことが必要です。人も場所も含め、園を取り巻く環境全体がゴールを目指してより良くなれるよう、その中心的役割を担うことが保育園にはできるはずです。どんな取り組みを実施し、実施前と実施後で何がどう変化したのか、活動報告を公表できると良いでしょう。

保育園ができる取り組み

保育士がSDGsについて知ること

まずは何よりも「知ること」です。実際にどんな問題が起こっているのかを知り、その問題を解決するためにはどんな課題があるのかを知り、課題解決に取り組むために具体的にどんなことができるかを考えます。17のゴールに整理されてはいますが、その中身は独立しているわけではなく密接に関わり合っています。

保育にSDGsを取り入れるというよりは、SDGsの観点を持って保育を深めるイメージです。保育所保育指針や教育・保育要領の中にある10の姿と立ち位置は似ているでしょう。普段の保育や子どもの様子を10の姿の観点から分析したり展開させたりすることで保育がより深まったり広がったりします。

SDGsは地球規模の大きな課題に思えて実は私たちの身近な問題です。そしてリアルタイムで世界で起こっている問題です。例えば環境問題一つ取っても我々大人世代が学校で習ってきたものは過去のこと。更なる環境変化が起こったり研究が進んだりして、常識として知られていたことも全く異なる状況に置かれていることがあります。この機会に最新の知識を得ることが重要です。

知る時に大切なのは園内の共通理解、共通認識です。ただ知識としてインプットするだけでなく、それをうちの園の保育に照らし合わせるとこういうつながりがあるよね、と合わせてアウトプットしていくことでSDGsというものがより身近な課題になります。そこに保育実践が重なることでより理解も深まるでしょう。

子どもたちに「持続可能ってどういう意味?」と聞かれた時に、園の普段の保育とつながるような答えが返せるのが理想です。

子どもたちと共に考えること

正しい知識を得た後は、考えることです。個人でできることもありますが、ここでは保育園でできることを考えましょう。普段何気なくしていることが実はSDGsに繋がっているということも十分あり得ます。大切なのはSDGsを意識すること。そして子どもたちを巻き込んで取り組むことです。子どもたちには知識を与えるというよりも、SDGsを意識した体験をさせることに重きを置くと良いでしょう。

保育園のSDGsの取り組みの例

食育
食育に力を入れている園は多いでしょう。安全で美味しいものを提供するだけでなく、どうやって作られているのか、食べ物の大切さや毎日ごはんが食べられることへの感謝など、学べることも多く、食べることはすべての根源といえます。SDGsのゴールでも貧困・飢餓・健康・水や自然の豊かさといった多くの分野につながるため、多角的な視点で捉えることで保育が広がるでしょう。畑で作物を育て収穫する、自分たちで料理をする、調理される前の状態の実物を見せるなど体験できることもたくさんあり、その体験からさらに食への理解を深めることができます。

園外保育
お散歩や遠足など園外保育では子どもたちにも「社会の一員」を感じられる機会がたくさんあります。地域の人とあいさつを交わし交通ルールを守ること、住みよいまちづくりのために子どもたちとクリーンアップ活動をしている園もあります。公園に咲く花やお散歩途中に見かける動物など子どもたちの興味を引くものもSDGsへつながります。ある園ではお散歩に図鑑を持ち歩いて見かける植物についてその場で子どもたちと調べることもあるそうです。知的好奇心を大切にしながら自然や生き物の大切さを体験することができます。動物園や水族館といった場所への遠足も、行く前と後に関連した知識を得る機会があれば体験がより濃いものになるでしょう。

廃材工作
保育園では子どもたちがいろいろなものを作ると思いますが、その材料に廃材(通常捨てるもの)を使うことも多いでしょう。トイレットペーパーやラップの芯、牛乳パックや新聞紙など家庭の身近にあるものを使って作品を作ったり遊びの道具にしたり、想像力次第でなんでもできてしまうのが子どもたちのすごいところです。ただ遊ぶだけでなく、この廃材がどうやって生まれたのか、どうしたら使い切れるのか、最後にはどう処分するのか、考えるまでがリサイクルと言えるでしょう。捨てる時には分別することも学ぶことができます。ある園では、使わなくなった段ボールで分別用のゴミ箱を作って、どんなものも一つ一つ分別して捨てることが子どもたちの習慣になっています。「これは何でできているの?」と素材に興味を持ち、どうやって作られているのか知ることも使う責任を果たすことにつながります。

保護者や地域に発信すること

保育園では、質の高い保育を提供すること自体がゴール4の「質の高い教育をみんなに」に直結していますが、保育園という存在はSDGsではもっと大きい役割を担っています。それは、地域にとって影響力・発信力が大きいからに他なりません。保育園を通して地域にSDGsの取り組みを広げていくことが期待されています。

園内で実施している取り組みを公開したり、地域住民も巻き込める形のイベントにしたり、方法はいろいろと考えられます。一番簡単なのは保護者に対しての発信です。私たちの保育園ではこのような方針でこういった取り組みを行っていて、それはSDGsのこの部分にも繋がっている、おうちでも子どもから話を聞くなどしてSDGsを意識してみてほしい、というような取り組みであればすぐにでも実践できるでしょう。

最近は、園のホームページにSDGsの取り組みについてページを作って掲載している園も増えてきました。園にとっては園の方針を噛み砕いて伝える材料にもなりますし、保護者にとっては外には見えづらい園内の保育を知る手がかりになります。そして職場として保育園を探している保育士(学生も含む)にとっても園を選ぶ上での大事な情報になります。

2030年はもうすぐそこまで来ている

SDGsに向けた取り組みは、何か特別なことをしなければならないというものではありません。私たちの毎日の生活の中、そして延長線上にあるものです。だからまずは「知ること」が第一歩です。どんな問題も、認識して初めて取り組むべき課題が明確になります。そして、「知らなかった」じゃ済まされない差し迫った「私たちの」課題です。

2030年の期限までもうすぐです。採択された2015年から考えれば今は折り返し地点というところでしょうか。169のターゲットを中心に毎年報告書も公表されていますのでそちらもぜひ確認しましょう。

参考:SDGs報告2023

国際連合広報センター

個人の力は小さいかもしれません。また、世界共通の課題と言われても大きすぎてピンと来ないかもしれません。そんな時は見方を変えてみましょう。保育園という場所も、一人ひとりの保育者が集まって成り立っている場所であり、地域社会の一部です。保育者一人の行動が、園全体に影響を与え、ひいては地域社会にまで繋がっていくのです。特に保育園は地域社会の中で大きな存在だと言えるでしょう。そんな影響力のある保育園という場所だからこそ、率先して課題に取り組んでいきたいものです。

いま目の前にいる子どもたちに未来を託すなら、問題ばかりの負の遺産ばかりではなく明るく豊かな希望を引き継ぎたいとは思いませんか。未来を生きる子どもたちのために、私たちが今できることを。

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