保育業界での生き残りを本気で考えている次世代経営者にこそネクサスを知ってほしい【社会福祉法人山ゆり会・松山圭一郎先生にインタビュー】
社会福祉法人 山ゆり会さまホームページ
茨城県守谷市・龍ケ崎市にて「遠くても、通いたい保育園。」をコンセプトに自然豊かな環境で子どもの主体性・自己肯定感を育むのびのびとした保育を実践しています。
2023.5.24
株式会社ネクサスはこれまでに、社会福祉法人山ゆり会(以下山ゆり会)さんのキャリアパス設計サポートや管理者・リーダー研修などの園内研修を実施させていただきました。今回は山ゆり会さんの人材育成への考え方について、そして一緒に設計したキャリアパスの仕組みについて、社会福祉法人山ゆり会の法人本部長、松山圭一郎先生にお話しを伺いました。 【実施・導入実績】 ● キャリアパス設計 ● 保育施設専用人材育成クラウドCAN-PATH ● 園内研修(管理者研修、リーダーシップサーベイ)
目次
「遠くても、通いたい保育園。」を実現するために
”遠くても、通いたい保育園。”を実現するために一番大切なのは「言っていることと、やっていることが一致していること」
―― 早速ですが、山ゆり会さんのホームページや各種講演会などでお見かけする”遠くても、通いたい保育園。”についてお聞きします。こちらを実現するにあたり、先生が1番大切だと考えていることは何でしょうか? 「言っていることと、やっていることが一致していること」ですね。 例えば、山ゆり会のホームページを見て素敵な園だと思ってくれて実際に園見学に来てくださったとしても、園が掲げていることと保育現場とにギャップがあっては、期待をされて見学に来た分のガッカリも大きくなると思います。これは利用者はもちろん、山ゆり会で働きたいと思ってくれた職員も同様です。私たちが今掲げていることはハードルが高いことかもしれませんが、実際に来園していただいた時に掲げていること以上のものを提供できるようにすることが大切だと考えています。さらにそれは山ゆり会のある1園だけでなく、グループ全ての園で実現できないとダメだと思っています。 ―― 山ゆり会さんの保育施設5園全てで同じクオリティで、ということですね。 その通りです。理想は入園前の利用者入所希望欄の上位に山ゆり会の園だけ書いてくれることです(笑)。自宅や職場からの距離に関係なく「山ゆり会の保育園に通わせたい」と利用者に思ってもらえるよう準備したいと考えています。そのため、山ゆり会で掲げていることは全施設で実現できるよう強く意識しています。「同じ山ゆり会だけど、この園は良くて、あの園はダメ」と思われたら、そのエリアでは違う法人の園に入園してしまうかもしれないですよね。多少距離が遠くても山ゆり会の園を選んでもらえるように、一定水準以上の保育を山ゆり会の全園で提供できるようにすることが大切だと思っています。そのためには職場環境をより良くすることも大切ですね。職員にとっても"遠くても、働きたい保育園。"であり続けられるようにしていきたいと思います。 ―― そういったことを強く意識し始めたのはいつ頃からでしょうか? おそらく5〜6年前ではないかと思います。法人の特色を伝えるためにブランディングが必要かな?と考えている時、法人内のちょっとした会話の中からこの言葉が生まれてきたと記憶しています。そして元々「近隣の方だけでなく遠方の利用者も多いのではないか?」と、実はこれまでも自然にできていたことだったのかもしれないとこの時に気づきました。それをより意識して外部に発信していきたいと思ったのが"遠くても、通いたい保育園。"という言葉が生まれたきっかけです。 ―― 掲げていることをさらに越えると言うのは大変なことではないですか? 仮に30分近くかけてわざわざ遠くから園に来てもらう利用者がいらっしゃった場合、その期待に応えるために掲げていることをやる「覚悟」が我々に必要だと思っています。少子化で子どもの数は減ってきていますが、その一方で保護者の方が子どもたち一人ひとりへかける想いや期待は、より強くなってきていると感じています。実際に市外からの入園問い合わせも増えてきているのでその実感もあります。だからこそ、より良い保育環境を作りたいと強く思っています。ですから最初にも言ったように「言っていることと、やっていることが一致していること」がとても大切。掲げるのは簡単ですが、それを実践する覚悟が必要。私はそう思っています。
山ゆり会さんの人材育成の考え方
組織の最低限のルールをマニュアル化することが必要。ないと組織がバラバラになる
―― 掲げたものを実現するためには保育の要とも言える保育士の育成が欠かせませんが、人材育成をする上でどのような取り組みが必要だと考えていらっしゃいますか? まず組織の最低限のルールをマニュアル化することが必要だと思います。これがないと組織はバラバラになると私は思っています。私としては「山ゆり会のどの保育園に行っても同等かそれ以上のサービス(保育)が受けられること」が最低限必要だと考えていますので、そう考えるとある程度、法人の基準・ルールを設けて法人内複数施設で足並みを揃えていくことが大切だと考えています。 ―― 今から約6年前、法人内の人材育成の足並みを揃えていくために山ゆり会さんとネクサスと一緒にキャリアパスを設計しました。その当時は「キャリアパス」という言葉が保育業界にそれほど馴染みがなかったように思いますが、先進的に取り組まれた理由や背景を教えていただけますか? 理由はシンプルで以前の保育施設の人事評価は「園長や主任の主観が多かった」からです。つまり職員の頑張りへの評価が関わる上司によって変わってしまう。だから法人としての指標を作る必要があると考えました。 例えば、人材育成を進めていくと職員個々の課題を伝えなければならないケースも出てきます。その時職員に、何ができていて何が足らないのか?を園長の主観だけでなく、法人の指標と照らし合わせて判断できると良いと思っています。だから山ゆり会では、職員に期待する仕事の指標を「専門性・組織性・指導性」に分けて明確にし、ステージ(職員の能力)ごとに指標を整理しました。それを全職員に示し「山ゆり会として〜」ということを理解してもらい、それを上司も理解して面談でフィードバックをする。そんなイメージで実施しています。 法人としての指標に照らし合わせることで、人事評価・面談の際にできていることは素直に認めて・褒めて、指標に届かない課題は今後どうしていこうか?と具体的な話ができるようになる。それが今、山ゆり会ではうまく回せているように感じています。 ―― 具体的にはどのような取り組みをされていらっしゃるのでしょう? 山ゆり会のキャリアパスに沿った4ヶ月に1回の全職員面談です。さらに正規職員は人事考課面談も含めるとプラス2回の面談があるので、多い職員は年に5回の面談の機会があります。面談ひとつとっても、実施だけでなく準備にも時間がかかるので、保育現場に負担が出ないように面談時間を作れる準備をしておくことも欠かせないですね。やはりこれも山ゆり会の全施設でできていないとダメだと思いますから。 ―― 保育現場が忙しくて1年に1度の面談時間もなかなか確保できない…という声もよくお聞きしますが、4ヶ月に1回の面談を確実に実施するにあたり工夫されていることはありますか? 人手を多く確保しておくことですね。1人が面談で抜けても現場が回せるようにしておくことが必要です。だから採用も大事になりますね。
山ゆり会の保育をしたい!と言う人に選んで欲しい
―― やはり“遠くても、通いたい保育園。”は、働く職員にとっても大切と言うことですね。 もちろんです。山ゆり会の園は全て茨城県にあるので地域的には千葉・東京の園と採用面において戦わなくてはならないのですが、賃金だけを切り取ったら正直勝てません。だから園を探している保育士さんにも「山ゆり会で働きたい!」思ってもらえるような準備をしておかなければならないと考えています。そういう意味では、職員面談を年3〜5回確実に実施することで、職員と必ず1対1で直接会話をする機会を多く作れるのはメリットだと思っています。普段じっくり話をするのは難しいですし、そこで本音で話ができるので、密にコミュニケーションが取れる良い時間になっていると思います。良い職場環境づくりに欠かせない大切な時間です。 ―― 面談がとても実り多い時間になっているようですね。年間3〜5回の面談が定着し始めたのはいつ頃からなのでしょうか? 以前から面談はしていたのですが、現在の形が軌道に乗り始めたのはネクサスさんの自己評価シートがクラウド化(保育施設専用人材育成支援クラウドCAN-PATH)したあたりからですね。以前は紙ベースで面談や自己評価をしていて、やり取りや運用面に課題があって正直活かしきれているとは言えずにいましたが、クラウド化して職員とのやり取りもスムーズになり、確認もいつでもできるようになって本当に良かったなと思っています。職員も相当数いるので、紙を印刷して確認して記入して共有して・・・は正直大変な作業でした。
―― 職員面談が人材育成でうまく機能しているとのことでしたが、やはり保育施設にとって人材育成は大切ですね。
保育施設は人が全てです。保育業界で人材育成を疎かにしたら他に何をするのか?と私個人は思います。どんなに素敵で新しい建物でも、そこで働く職員が輝いていなければ組織は暗くなってしまいますよね。両方整えばもちろん最高ですけど、建物はすぐにそうもいかないので、職員が輝くことが何より大切かなと思います。
ネクサスと設計したキャリアパス
ネクサスは「作りたいものを一緒に作ってくれる」と思った
―― 少し話は戻りますが、6年前に山ゆり会さんのキャリアパス設計を進めるパートナーとしてネクサスを選んでいただいたきっかけや理由など聞かせていただけますか? 「作りたいものを一緒に作ってくれる」と思ったのが非常に大きかったですね。しかもネクサスさんは保育施設に特化していることも決め手の1つでした。 ―― そう言っていただけて嬉しいです! そのキャリアパスを設計して数年経過しましたが、設計したメリットだと感じることはございますか? 1つは、山ゆり会の求める職員像が明確になったことですね。 キャリアパス設計の中で職員像を明確にするプロセスがあり、それを言語化にすることで「山ゆり会としての職員採用基準」が明確になりました。採用面接者の好き嫌いではなく、山ゆり会が求める職員像に沿った視点での採用ができるようになり、結果的に採用時のミスマッチが減ったと感じています。 もう1つは、新任職員の採用前や入社時に山ゆり会の職員としての期待値をストレートに伝えられることですね。「山ゆり会では今後こんな職員に成長して欲しいと思っています」「こういった仕事を期待していますよ」と指標が言語化されているので、それを明確に伝えられるのはメリットですね。そのように法人からのメッセージが先にも話した職員面談にも繋がっているので、常に一貫して伝えることができます。職員の長所や課題を伝える際にも法人のモノサシ(基準)があるのは本当にやりやすいと思っています。 ―― メリットを多く感じてくださっておりますが、一方でキャリアパスの設計は大変でしたか? 正直大変でした(笑)。ネクサスさんにはキャリアパス設計のコンサルティングや事前準備、打ち合わせ内容のまとめ作業などを主にサポートをしていただきましたが、最終的に中身を検討して決定するのは我々ですから、各園の園長で何度も集まって議論した記憶があります。時間も労力もかかりましたが、設計を通じて園長たちの関係性も深められたり、自分たちが携わって設計した仕組みだからという思い入れもあるので、人材育成面でかなり活用できていると思います。当時は今のようにオンラインも定着してなかったので、打ち合わせをする際は全て現地に集まる必要があったのも当時苦労した要因かもしれませんね。 ―― ネクサスがキャリアパス設計サポートに入ったことでのメリットはございましたか? 複数園あるので設計メンバーとの橋渡し役や、設計の際には疑問点にすぐ答えてもらったり、他施設での設計事例など教えてくれたりと、こちらが検討を進める上で縁の下の力持ちとしてとても助かりました。
―― 現在はそのキャリアパスを元に人材育成を促進されていらっしゃいますが、運用面での難しさや苦労はありますか? 例えば面談1つとっても、ただ面談の時間を作ればいいという考えでは人は育ちませんし、だからこそ真剣に向き合わないと職員からは本音が聞き出せませんよね。1日に多くの職員と面談することもありますが、より良い面談の時間にしようと準備の段階から頭フル回転ですよ(笑)。山ゆり会では面談シートを事前に準備するので、事前準備も含めると面談1つ取っても決して簡単なことではないですね。ですからやはり「やる覚悟」ですよね。時間がないではなく、作る・やる。 ―― ネクサスとキャリアパスを設計する前から、このような育成の取り組みは進めていらっしゃったのでしょうか? そうですね。今と形式は違いますが取り組んでいました。ただ、職員に求めたい能力の指標は明確にできてなかったので、ネクサスさんと出会わなければ現在の形ではできてなかったですね。ネクサスさんのようなサポートを、保育施設専門にしてくれる会社ってそんなに多くないと思います。 ―― そう言っていただけて嬉しいです!
人材育成が促進できていると感じる理由
「人材育成の仕組み」と「人を育てる意識」
―― 少々答えにくい質問かもしれませんが、先生が法人にお勤めになった際に感じた人材育成の進み具合と、現在の人材育成の進み具合を10段階の数値で表すとどのくらいでしょうか?(①悪い→⑩良い) 入った時は4ぐらいかな?今は8ぐらいでしょうか。 ―― なるほど。スコアが4つ程度伸びたと感じる部分はどんなところでしょう? やはり「人材育成の仕組み」です。あとは「人を育てるという意識」ですね。元々創設者も人材育成への意識は高かったですし、当時としても他の保育施設より人材育成に関して先進的だったと思います。しかし保育施設全体で見たら、まだまだ足りない部分や改善する部分はあるとも感じていました。そこに着手して変えていけたことが良かったなと思っているのでスコアを4つ伸ばしました。現在は法人全体で人を育てようという意識が以前より高まっていると感じていますし、何より職員自身が自分自身の成長に対する意識が高まっているように感じます。 少々現実的な話になってしまいますが、少子化で保育施設の多くは園児定員が減少傾向にあるので、いずれ保育士も働く場所が減ってくるかもしれないですよね。また社会全体的に定年の年齢も引き上げられてきている。だからこそ組織にとってはもちろん、職員にとっても自己成長は大切なことだと思っています。 ―― キャリアパスのような人材育成の仕組みを、どのような園におすすめしたいと思いますか? 複数施設を持つ法人で、人材育成にどこかバラバラ感を感じている組織ですかね。 コンビニを例にすることは適当ではないかもしれませんが、コンビニは全国各地どの店舗に行っても同様の商品購入ができ概ね同等のサービスが受けられるように、法人の複数園で同レベルの質を保ちたいとの目的を持っている方ならば特にマッチするのではないかなと思います。もちろん同じ県内でも地域によって保育の特色や環境の違いなどはありますが、最低限押さえておきたい基準・レベルは統一しておきたい。山ゆり会がそうなのですが、5〜6園程度だとより考え方が浸透しやすい組織の規模感かなと私個人は思っています。 ―― 最後に。 私たちネクサスは保育施設専門に人材育成を幅広く支援していますが、どのような方に知って欲しいと感じますでしょうか? 保育業界での生き残りを本気で考えている二代目・三代目の経営者の方に特に知って欲しいし、おすすめしたいかなと思います。先代が園を始め、いざ自分たちの代に引き継いで「これから絶対生き残ってやるんだ!」という気持ちのある方は、ネクサスさんを知って損はないかなと思います。 ―― 本日は貴重なお時間ありがとうございました!
インタビュー担当者談話
今回インタビューをさせていただいて感じた印象は「言ったことは確実に実践する」という覚悟の重要さを多く語って下さったこと。私たちネクサスもキャリアパスを運用していく上で、決まったことを確実に実践することはとても重要なことだと考えています。ですからキャリアパスは「設計すること」がゴールではなく、キャリアパスを活かした「人材育成ができること」がゴールであると思っています。今回お話を伺った山ゆり会さんは、キャリアパスを活用した人材育成を促進し、その成果が実感できているとのことでした。これこそ、設計時に決めたことを確実に実践し続けた結果であると感じています。今後も山ゆり会さん独自の人材育成の仕組みをアップデートし続け「遠くても、通いたい保育園。」であり続けていただきたいと思います。そしてネクサスのサポートが山ゆり会さんの人材育成の一助となるよう、今後もサポートを続けて参ります。
インタビュー担当者:遠藤勇樹